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 えんじょい   いわき自立生活センター・えんじょい会報

  No.5     発行/1997年8月8日


連絡先:福島県いわき市平研町1  電話0246-21-6779


1.1カ月で7倍の介助派遣 求む介助者 充実感保証! 2.自立への足跡 3.外泊は楽しい 4.「どんぐりの家」上映にご協力を 5.活動日誌(6~7月) 6.アメリカのCILの歴史と福島のCILのこれから 7.福島CILの山下さん来る 8.新人スタッフ紹介 9.編集後記


1.1カ月で7倍の介助派遣 求む介助者 充実感保証!

 介助派遣サービスを開始してから早3カ月がたち、予想以上の介助依頼件数に私は汗だくです。ここが暑いせいもあるのですが。(笑)5月はトータルで附き時間程度で、6月には倍の14時間、そして7月に入り前月の約7倍の100時間近くにまでUPしました。連日介助派遣するのははじめてということもあり人手の確保に苦労もしましたが、なんとか安定した介助派遣が可能になりました。ただし、入浴介助に関して、7月の時点で男性介助が4人しか確保できず、結局週3回の入浴という十分とはいえない内容であったことが反省点としてあります。また、入浴の介助には同性の介助者が3人以上は必要です。7月は介助スタッフが協力して週1回入ってくれましたが、仕事と家庭をもった男性が継続して毎週介助に入ることはどうしても負担がかかりました。

 「男がいなーい」と嘆いているうちにとうとう8月を迎え、ついに当センターの所長である鈴木実さんが一人暮らしに第一歩を踏み出しました。おめでと~!と喜んでばかりいられません。彼はパソコン操作以外はほとんど全面的に介助が必要なので、さらに同性介助者が必要です。実さんの門出に喜びを噛みしめる間もなく、介助日程表とにらめっこしながら電話での介助依頼に忙しい日々を送っています。幸い、他のスタッフの協力もあり現在12名ほど確保できました。(この10日間で当初の3倍の介助者が集まってくれて正直驚いています)しかし、キャンセルや緊急時などに対応できるように最低20名は確保したいのです。これを読んだ男性の方、ぜひ協力をお願いします。介助内容はトイレ、入浴、着替えなどが主で、現在必要な介助時間は毎夕6時30分から10時までと土日の午前、午後各3時間程度です。今のところ平日の夜の派遣はだいぶ確実になってきましたが、土日の介助に入れる人員が不足しています。月に1~2回(週1回なら大歓迎!)程度でも結構ですので、介助に関心のある方、そして実際に協力していただける方はセンターまで至急連絡ください。よろしくお願いします。

担当 湊久美子

2.連載(第1回)自立への足跡

 暑い日が続いていますが、皆さんお元気ですか。今回の会報から、「自立への足跡」と題した、堅いタイトルで、やわらかい内容の連載記事を企画致しました。私、鈴木 実という一人の重度の障がい者が、文字どおりの自立生活をこれまでどのように考え、その実現にむけてどんな行動をしてきたか、そしてこれから先の実体験などを書き連ねていきたいと思っています。

 会員の一部の方には、私がどんな人間であるかお判り頂けているかと思いますが、まず、自己紹介的なものから書き始めます。

 私は、1950年7月4日生まれの47才で、はっきり言っておじさんです。障がい名は脳性マヒ。私は生まれたとき、オギャーという産声をあげなかったそうです。産声をあげなかったのは、仮死状態で生まれたからで、そのダメージが首から下の自由がきかない、という形で残ってしまったようです。介護用語で、全介助の状態ですが、言語障がいはありません。

 幼児期は病弱でしたが、現在は「お化け」といわれるくらい健康になり、ほとんど病気をしません。

 私には、生まれて40年間家族と共に過ごした在宅暮らし、その後7年間の身体障がい者療護施設での暮らし、このふたつの生活体験があります。

 学校といわれる所には全く行っておりません。家では外出することも数えるほどでした。

 その間両親は、様々な人たちを家に招いて、私との出会いの場をもたせてくれたうえ、私の意志というものを大切にしてくれました。

 それらで培われた私の思いが、7年前の施設入所そして8月から始める自立生活への決断につながっています。

 施設入所に関しては、それまでなかった同じようにハンディを持つ仲間とのふれあいをとおして、喜びや悲しみを共有したいという思いから、みずから行政と交渉し、入所致しました。

 在所中私には、これまで自分でできなかった移動する手段として、特製の電動車イスが与えられたり、自立生活センターとの関わりがもてたりと、プラス面が多かったのですが、施設という居住空間の重さを一部の利用者から感じることもございました。

 さて、この会報が皆さんのお手元に届くころは、すでに私の自立生活はスタートしています。

 私自身の意志決定から、家族ならびに施設への意思伝達と理解を得る作業、自立生活の先輩の住居訪問、住宅探し、各機関との折衝、これらのプログラムを経て実現した自立生活です。

 これからの暮らしは困難なことが多いと思っています。特に男性介助者の不足が頭痛の種です。ともかく、私自身が望んだ道をしっかりと歩んで行きます。皆さんのご協力を。

 次回は最初の体験談をご報告したいと思っています。

鈴木 実

3.外泊は楽しい --ILP第4回 一泊二日で--

 ・参加者が満足してくれてよかった

 7月11~12日と久之浜にあるいわき海浜自然の家にとまり、メモリアルカレンダー作りに挑戦したり、風景を見てまわったりして楽しみました。

 夕食はバイキングを全員で食べて、夜は自由行動ということで、お風呂に入ったりして一日目は終了。

 翌日は私が自分の用事のため、最後まで参加できなかったことが残念でした。でも、参加した障がい者が少なからず満足して帰ったそうなので、企画した者としては安心しました。

飛田市子

・楽しい二日間にありがとう

 今年の4月から、えんじょいのプログラムのもとに、いろんな事に参加させていただいております。今回は一泊二日ということで、いわき海浜自然の家で、施設では味わうことができない楽しい二日間を過ごさせていただきました。

 今回、施設の職員の方以外に初めてトイレとお風呂の介助を受けました。多少恥ずかしさを感じましたが、「何事も経験、前向きに行こう!」と思い、お願いしました。翌日はあまり恥じらいは感じることもなく、自然にトイレの介助を受けることができました。

 建物に関しては、とてもよいところだったと思いました。私が気に入ったところといえば、お風呂が入りやすくできているということと、一般の人たちと同じ場所に障がい者用のトイレが何カ所も設置してあるということでした。

岩淵妙子

4.「どんぐりの家」上映にご協力を

 小学館発行の「ビック コミック」に連載中の「どんぐりの家」という作品をご覧になったことはありませんか。

 視覚障がいに加え、知的障がいや身体障がいなどを持つ、いわゆる「ろう重複障がい」の子供とその家族の、埼玉で実際にあったことをもとにした物語です。連載4年目の今は、作業所づくりの運動を描いているところですが、「どんぐりの家」とは、その作業所の名前なのです。

 この作品は、今まであまり注目されてこなかった「ろう重複障がい者」の問題を広く社会に訴えたということに加え、コミックという表現の可能性を私たちに教えてくれています。

 9月23日のいわきでの上映は、えんじょいが発案し、準備活動が始まったものであり、是が非でも成功させたいと事務局一同はりきっております。

 会員の皆さんの中で、チケット販売や宣伝等でご協力いただける方はご一報ください。折り返しチケットやチラシをお送りします。

 ・第1回上映実行委員会開かれる

 7月19日いわき市文化センターにおいて、「どんぐりの家」第1回上映実行委員会が開かれ、12名の方が参加しました。

 最初にビデオ「豊かな明日を--ろう重複障害者の福祉をめざして」を見て、討議に移りました。

 その結果、視覚障害者会といわき手話サークルが後援をひきうけてくださることになり、幅広い上映運動の可能性が広がってきました。

 第2回の上映実行委員会は8月23日(土)の午前10時よりいわき市文化センターで開かれます。「どんぐりの家」の予告編ビデオなども上映されます。ぜひご参加を!

5.活動日誌(6~7月)

6月 7~8日 JIL(全国自立生活センター協議会)97年度総会/東京 鈴木実 猪狩邦子 長谷川秀雄参加
    11日 平養護学校高等部生徒・先生が見学のため来所 12名
    13日 福障連(福島県全身性障碍者*等連絡会)97年度定期大会、FIL(福島県自立生活センター協議会)結成総会 いずれも福島市で 鈴木実 鈴木貞雄 飛田 長谷川 湊参加
    14日 障害者市民フォーラムin福島実行委員会/郡山 鈴木貞雄 長谷川参加
    18日 97年度第1回運営委員会/いわき市文化センター
    21日 えんじょい寄席/平窪公民館
    26日 福障連役員会 FIL常任委員会/郡山 鈴木実 長谷川 湊参加 
    28日 第2回コンピュータ教室/えんじょい、安心とやさしさのある道づくり協議会の検討部会/サナビリティズ 猪狩 長谷川参加
7月   1日 いわき明星大学の高萩盾男教授ならびにゼミの学生と交流
     2日 新潟市社会福祉課より視察のため来所
     5日 障害者市民フォーラムin福島実行委員会/郡山 鈴木貞雄 長谷川参加
     6日 障害者市民フォーラムin福島のボランティア説明会/いわき市文化センター、船引町自立生活センター「福祉のまちづくりの会」開所式典/船引町 鈴木実 長谷川参加
 11~12日 第4回ILP(自立生活プログラム)1泊2日/四倉町海浜自然の家
    14日 ピア カウンセリング・サポートグループ/船引 鈴木実 飛田 長谷川参加
    17日 福障連役員会 FIL常任委員会/郡山 鈴木実 長谷川 湊参加、建築士会の福祉マップ作り研究会へ出席/労働福祉センター 猪狩 長谷川参加
    19日 「どんぐりの家」第1回上映実行委員会/いわき市文化センター
    26日 第3回コンピュータ教室/えんじょい
    28日 第1回自立生活サポート研究会/福島市 鈴木貞雄 長谷川参加

     毎週水曜日午前10時より事務局会議

 *:「障碍者」標記について。福障連では「害虫」「有害」「公害」などと、よくないものを連想させる障「害」者標記は不快だとし、「妨げる・蓋をする」意味の「碍」を使うことを提案している。なおこれは造語ではなく、日本でも明治以前は「障碍者」と記していたのである。今日でも同じ漢字圏の韓国で「障碍者」と標記している。

6.アメリカのCILの歴史と福島のCILのこれから

 自立生活サポート研究会

 -桑名敦子さん(福島県企画調整部企画推進室アドバイザー)の講演の要約-

 以下の文章は、さる7月28日に福島市でおこなわれた第1回自立生活サポート研究会で桑名敦子さんが行った特別講演の内容を要約したものです。桑名敦子さんは、郡山市出身で現在ワシントン在住の方です。83年に、アメリカのバークレーのCIL(自立生活センター)に留学、そこで知り合ったマイケルウィンターさんと結婚しました。

 いわきへも94年、95年とご夫妻で訪れ講演を行いました。

(1)アメリカのCILの歴史

 70年代、アメリカのカリフォルニア大学のバークレー校では、エドロバーツら重度障害者の入学を認め、勉学と生活のためのサポートシステムをつくりだした。

 彼らは、卒業後そのシステムを地域社会へ広げるために、72年に初めて自立生活センターを創立した。

 彼らのいう自立とは、本人の選択権にあり、自らの選んだことの結果に責任を持つということだった。アメリカでもそれまでの福祉は、障がい者を変えていくことだった(健常者に近づくとこと)。ところがCILは、障がい者はそのままでよい、障がい者を受け入れない社会を変えようと訴えた。障がい者が生きやすいということはすべての人が使いやすい地域になるということでもある。

 全米で300以上のCILがあるが、その一番の特徴は障がい当事者が主人公であるということ。所長も理事長も障がい者であり、しかも男女比、人種的バランスなども考慮されている。

 1991年、ADA(障がいをもつアメリカ人法)が成立した。これは差別禁止法であり、公民権運動などで様々な差別が禁止された中で、最後に残されたのが、障がい者差別だった。

 でもADAができたからといって、アメリカ社会が一夜にして変わったということではない。法律は自動的に障がい者を守ってくれない。法律を活用して改善をせまっていく活動をやっているところだ。

(2)福島のCILのこれから

 日本も少しずつ変わってきた。20年前には障がい者用トイレなどなかった。

 駅にはエレベータもなく、行くと「来ないでください」なんて言われもした。

 今は、そんなことはなくなりつつある。しかし、問題も多い「優しさのある町づくり条例」で実際にできた設備は使いづらいものである。障がい当事者の声を聞かないで作ってしまったからだろう。

 福島のCILは、これから行政と一緒になってやっていかなければならない。

 行政とCILがお互いを利用してやっていくくらいの気概が必要だ。

質問 日本はまだ設備型福祉。なぜなのか。

答え 障がい者も含め多くの人々が、障がい者は施設の中が一番幸せと思っている。職員も一所懸命で冷暖房完備、快適かもしれないが、しかし地域には何もない。施設の方が整っているから一見幸せのように見える。老人はそれ自身が不幸なのではなく、その人をとりまく福祉が貧弱だから不幸に見えるのだ。地域で生きる条件が整えば、100%の人が施設でなく地域で生きることを選ぶはずだ。要は、選択肢があるかということ。現状では施設しかない。住宅、グループホーム、施設の中から本人が選ぶなら施設もあってもよいだろう。

7.福岡CILの山下さん来る

 福岡県八女市にある自立生活センター=障尊塾のスタッフである山下恭平さんが、8月24日にいわきにやって来ます。

 これは、いわき市内の市民団体が主催する「自分たちでつくる福祉社会~車イス議員大いに語る」と題した講演会の講師として招かれたもの。

 ■と き 8月24日(日)午後3時~5時

 ■ところ いわき市文化センター1F大会議室

 山下さんは、幼いときにかかったポリオで重度の肢体不自由障がいを有することになりました。

 95年には八女市議会議員選挙に挑戦。見事当選を果たしました。いわきでも障がい当事者の議員をつくりだすことも将来あるかもしれません。山下さんのお話しは、新鮮な発想を私たちにもたらしてくれるでしょう。

 翌25日の午前10時からは、えんじょい事務所で山下さんを囲んで、交流会を行います。参加は自由ですのでみなさんの参加を!

8.新人スタッフ紹介

 今度、こちらでお世話になります藤原寧子です。

 生年月日 S41.8.18

 趣味   ドライブ

 好きな食べ物  めん類

 嫌いな食べ物  レバー、セロリ

 これからいろいろ勉強しながらやっていきますので、どうぞよろしくお願いします。

9.編集後記

 8月はうれしい出来事が続きました。ひとつめは、所長の鈴木実さんが念願の自立をはたしたこと。個人別ILP(自立生活プログラム)をたてたのが今年の1月でしたので、ちょうど半年で実現したわけです。

 ふたつめは、藤原寧子さんというチャーミングな女性が新しくスタッフとして加わったことです。これで常勤者4名(障がい者スタッフ2名・健常者スタッフ2名)となりました。しかも男女2名ずつという絶妙のバランス! 

 介助部門が毎月時間数で倍増する勢いとなっており、2名の職員が代休もとれない状態であったので大助かりです。

長谷川 秀雄

 来る9月27日から29日の3日間、「全国障碍者市民フォーラムin福島」が開かれます。私達はこの大会のために月に1回、郡山に集まって準備を進めています。いよいよ1カ月前になりました。この大会には、全国からたくさんの障碍者の方々が参加する予定です。研修を通してお互いの交流を深めるのが目的です。私は、たくさんの障碍者の方々とお話しするのが楽しみです。郡山の実行委員の方々は、毎日汗だくのなかで準備を進めてきました。そして、県内の各地区でボランティアの説明会が開かれました。当日、ボランティアの方々の介護が必要ですので、ぜひ御協力ください。

 輝く未来に向かって、郡山の空へ羽ばたこう!

鈴木 貞雄